チャールトン・ヘストンの代表作の一つである「エル・シド」のブルーレイが、フルHDレストアされたリマスター版と日本語吹替音声を初収録して発売となったのを以前にお知らせしましたね。今回は本編でなくて特典ディスクをご紹介致します。
メニューは6項目。どれもが日本初公開の2時間を超えるボリュームです。
「エル・シド」完成までの舞台裏が語られます。主演のヘストン以外の出演者には色々な俳優の名前が挙がりました。
「スパルタカス」など他の多くのスペクタクル映画はセットでの撮影がほとんどだが、「エル・シド」は野外の撮影に重点を置いたそうです。
当時、スペイン以外ではあまり知られていなかったエル・シドが、映画の大ヒットで世界的に知られるようになりました。
人はスペクタクル大作に圧巻で大きなものを求めるが、壮大さが出過ぎると人間性に事欠く。しかし人間ドラマを映すと壮大さが減る。「エル・シド」はその両方のバランスが取れていると解説。
映画は世界的な大ヒットを記録して、当時のケネディ大統領も非常に気に入ってホワイトハウスでも上映されたそうです。
更にケネディ大統領はヘストンをホワイトハウスに招待して親交を深めたとか。
主演のヘストンの相手役に、アカデミー主演女優賞を取ったばかりで日の出の勢いのソフィア・ローレンにオファーするも脚本が良くないと断られる。ローレンを諦めきれない製作者のブロンストンは何度も交渉して、脚本をローレンが指名したベン・バーズマンに手直しを依頼する事で出演OKを取り付けた。
ところがフィリップ・ヨーダンの脚本は手直しするどころか、全面的に一からの書き直しとなり、綱渡りの撮影日程となる。
ブロンストンはローレンを出演させるために100万ドルの出演料と撮影日程もローレンの都合に合わせた。当時の100万ドルは超破格の金額で「クレオパトラ」に出演したエリザベス・テイラーに続く2人目となる。主演のヘストンより高額!物語の第一部から第二部の間に数年の歳月が経つ設定で、ヘストンは第一部の青年騎士から髭と顔の傷跡で精悍な古武士の趣となりますが、ローレンは老けるメイクを嫌がって若い姿のままだったそうでヘストンが呆れます(笑)
他にも色々な行き違いがあってヘストンとローレンの不仲が表面化してスタッフを困らせたようです。後年、ヘストンはその頃を反省していますが「エル・シド」が大成功した後に同じ監督、同じ脚本家、共演もローレンの超大作「ローマ帝国の滅亡」への出演依頼を断りました。他の理由(何年も海外遠征の仕事ばかりで家庭を留守にしていたので休みたいと日記に記述)もありますが、共演が再びローレンだったのも一因だったのでは?と言われます(笑)
製作者サミュエル・ブロンストンの生い立ちから映画界での動きが詳しく紹介されます。超大作が受けなくなって来る時代の流れに反抗、安上がりの低俗な映画を作る事を良しとせず、最後は倒産となるも信念を曲げませんでした。
監督のアンソニー・マンは西部劇に定評がありスタッフから信頼される存在でした。彼も貧しい生い立ちから紹介されます。ホテルに泊まるお金がなくて劇場で寝ていた時も。与えられたB級映画の雑な脚本に手を入れて、質を高めた良い作品に仕上げて地位を築いていきます。
ミクロス・ローザはアカデミー作曲賞に17回もノミネートされ3度も受賞した映画音楽家として名声を博しますが、クラシック音楽も多数作っていてコンサートの演奏もしていました。1年の半分は交響曲などを作曲して映画音楽は作らず、きっちりと分けていたそうです。
初めて見る20代のローザは驚くほどの二枚目!(笑)
ローザはアカデミー作曲賞を受賞した「白い恐怖」や「ベン・ハー」よりも「エル・シド」を最高のお気に入りとしていました。これは当時の映画雑誌でも読んだ記憶があります。
ラストシーンの撮影は屋外なので太陽が出て来るまで待ちます。そして撮影が始まるとエル・シドの出陣シーンで太陽の光が後光のように映り込みました。これは人工的なものでなく、狙った光でもない予期せぬ素晴らしい映像となり、スタッフを感動させたそうです。
馬に乗った死せるエル・シドが波打ち際を彼方へと去って行くラストシーンは私も大のお気に入りです。
最後のラジオインタビューの音声はチャールトン・ヘストンとソフィア・ローレンの他に、ヘストン夫妻へのインタビューもあり、妻のリディア・クラークの声を初めて聴きました。
「エル・シド」のブルーレイは前回発売のものを持っていますが、4チャンネルステレオの予定が手違いがあって2チャンネルで作られたそうです。今回は4チャンネル音響とHDリマスターの高画質、更に日本語吹き替えは納谷悟朗と申し分ないので購入しました🎵 次に購入する事があるとすれば4KUltra HDで発売された時ですね(笑)